- 作者: 西部邁
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1989/02
- メディア: 新書
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著者の意見で急所になっているのは、「相対主義」に対する批判だと思う。アイロニーとか言って相対主義を鼓吹し、しかし裏でこっそりイデオロギーを持ち込むのは現代の言説でありふれた光景であるが、こういう欺瞞を見て、若い人が馬鹿らしい気分になるのは当り前である。しかしそこで、著者のように「伝統」などを称揚するのも今更むつかしい。結局、究極絶対の真理(truth)はないが、それとは別に、生きていくための「知恵(wisdom)」というものはある、とでも言うくらいしか思いつかないが、そのような新しい時代のための「知恵」も、まだ、はっきりとした形をとっている訳ではない。とりあえず、ないものはないと認めて、謙虚にやっていくしかないのだろう。