戦争の罪を問う

戦争の罪を問う (平凡社ライブラリー)

戦争の罪を問う (平凡社ライブラリー)

ドイツの哲学者であるヤスパースが、第二次世界大戦においてナチスを頂いたドイツ人に対し「戦争の罪」を問うた書であるから、これは極めてデリケートな扱いを必要とする。この本を論ずるのは、情けないが、正直言って荷が重過ぎると言わざるを得ない。ここではとりあえず、仲正昌樹の『日本とドイツ 二つの戦後思想 (光文社新書)』から引用しておく。とにもかくにも、日本のヤスパースはいなかった。
「その意味で彼[=ヤスパース]は、ある特定の集団に属しているだけで自動的に罪があるとする『集団的罪=連帯責任Kollektivshuld』という考え方は、認めない態度を取った。これは一見、罪はナチスの最高幹部にだけあって一般国民は関係ないという言い訳のように思えるし、そう理解してしまう人も少なくないが、彼は決して一般国民には『罪がない』と言っているわけではない。『国民』という抽象的な集合体がまとまって罪を負っているかのような語り方をすれば、国民を構成する各個人がそれぞれ異なった仕方で、異なった重さで負っているはずの罪の具体的な中身がかえって曖昧なものになってしまう。各個人が、自分の罪について主体的に考えるべきだというのが、ヤスパースの議論の大前提である。」