日清・日露戦争

日清・日露戦争―シリーズ日本近現代史〈3〉 (岩波新書)

日清・日露戦争―シリーズ日本近現代史〈3〉 (岩波新書)

日本史について通り一遍の知識しかない者にとっては、岩波新書のこの日本近現代史のシリーズの記述の詳しさは、咀嚼するにかなり大変であるが、読むにしっかりした手応えはある。司馬遼太郎は、日本がおかしくなっていくのは日露戦争あたりからだと言っていたと思うが、本書を読むと、既に日清戦争の頃から嫌な感じだ。朝鮮半島への野心がみえみえで、強引に清との戦争に持ち込んでいくあたり、ほとんど弁解の余地なしである。ヨーロッパの帝国主義に対抗して、そうせざるを得なかったなどという論理は、どこまで正当化できるものなのだろうか。国民が新聞などを通じて、戦争を望んでいくのも確かではあるが。(もっとも、日露戦争に反対した「平民社」の存在等もあって、これなどは知らなかった。)韓国と台湾の植民地化について、以下引用しておく。
「植民地台湾と朝鮮への日本の政策は、『進んだ日本』の、技術や資本を『遅れた地域』に移しただけで、欧米のような『極悪な植民地支配』をしたわけではない、という言い訳が二〇世紀末以来この日本に広がりつつある。これまでの詳細な研究によれば、そんな『言い訳』は一笑に付される低い水準のものでしかない。経済史の研究では、台湾は製糖と南進の拠点として開発され、日本内地の生活充実と国土膨張に役立たされているのであって、単純な開発策の実施ではない。」
「また『進んだ』『遅れた』という底には、差別意識が見えてしまう。韓国併合は、腐敗していた朝鮮王朝に責任がある、と日本が積極的に植民地化へ動いたことを隠蔽して、植民地支配を正当化する意見さえも見られる。」
「『植民地支配』とは、いかに本国が資本投下しようと、本来それは本国の繁栄のためであって、逆ではない。」