精神と身体の二元論に陥らないことは可能か
- 作者: 市川浩
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1992/04/06
- メディア: 文庫
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この本で面白いのは、身体と精神の関係を、現象学的なアプローチで解明した部分である。身体は、痒みを考えればわかるように、意識に内在的である場合がある一方、自分の足を他人に示す時のように、意識に外在的である場合もある。また、他者の認識する私の身体(対他身体)というものも、考えることができる。さらに、その対他身体に対する私の意識などもあって、以下続くわけであるが、これなども単なる空想ではなくて、たとえば赤面などは、その一例だと考えることができる。大体、表情というものが、精神と身体が複雑に絡み合って存在するところのものなのだ。
この本の後半は、生理学的な事例によって身体を考察しているが、精神の方ががどこかへ行ってしまった感は否めない。記述も生硬である。また、言語をこのようなアプローチで記述するのは、かなり無理があるといわざるを得ない。