中世の寺社勢力

寺社勢力の中世―無縁・有縁・移民 (ちくま新書)

寺社勢力の中世―無縁・有縁・移民 (ちくま新書)

五百年にもおよぶ中世の中で、唯一一貫した勢力は何か。それは寺社勢力だと著者はいう。この本では、中世でいかに寺社が大きな役割を果していたことを教えてくれる。大体、中世史を書くのに、幕府や朝廷の文書はほとんど残っていず、貴族の日記を除けば、寺社に伝わる文書を使うしか他に手がない、というのは意外だった。学界ではどのような評価になっているのか知らないが、著者は、中世の寺社というものは一種の都市で(著者は「境内都市」と呼んでいる)、無縁の場だという。そもそも僧兵というものが誤解されているのであって、ちゃんと甲冑を身に付けた兵士だというのだ。山門などは朝廷のやることが気に入らないと、神輿を繰り出してたびたび強訴に及んだという。たいへんな力を持っていたわけである。