タンパク質研究のすばらしい発展

タンパク質の一生―生命活動の舞台裏 (岩波新書)

タンパク質の一生―生命活動の舞台裏 (岩波新書)

本書の中心は第三章以降であるが、特に第三章のタンパク質のフォールディングと、第四章のタンパク質の輸送の話がおもしろい。
 タンパク質のフォールディングについては、αヘリックスやβシートなどの二次構造が、最低エネルギー状態において自動的にさらなる高次構造を取る、といったイメージしかなかったのであるが、現在の研究によれば、「分子シャペロン」というタンパク質が大きな役割を果しているという。最低エネルギー状態をもってそう簡単にフォールディングする訳ではないし、またフォールディングに失敗する場合もあって、その際に失敗したものは上手く排除するメカニズムがあるらしい。「分子シャペロン」の働きは大変なもので、比喩でいえば、ゆで卵を生卵に戻すくらいの力があるという(実際には卵は大きすぎるので無理だが。)
 また、輸送については、微小管がレールになって、モータータンパク質が荷物を運んでいく、などというのは驚きだ。「荷札」すらあるらしい。昔は、熱力学的な拡散によって輸送されるとかいう認識だった筈である。まったく、分子生物学の進歩にはすばらしいものがある。