- 作者: スラヴォイ・ジジェク,鈴木晶
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2008/01/30
- メディア: 単行本
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それから、これはまあブログだから書いてもいいと思うが、ジジェクの(物理学における)相対性理論の理解は間違っているところが何箇所かある。
「アインシュタインの特殊相対性理論から一般相対性理論への移行を例にとって考えてみよう。特殊相対性理論はすでに歪んだ空間という概念を導入しているが、その歪みを物質の効果と見なしている。」
ジジェクがどういうつもりで空間の「歪み」といっているのか分らないが、空間が歪むというのは、一般相対性理論になってからと考えるのが普通である。「特殊」の方はせいぜい四次元の斜交座標系で考えられており、「一般」のように、空間の歪みを記述できるリーマン空間がまだ導入されていない。とりわけ、物質の効果で空間が歪むのは、はっきりと「一般」の方である。また、
「一般相対性理論は、歪んだ空間という概念によって、観察者にとってのすべての運動の相対性と、光の絶対的速度(光は観察者の位置にかかわらず一定速度ですすむ)との矛盾を解決する。」
とあるが、これはむしろ特殊相対性理論の解説にふさわしいものである。これを見ると、どうもジジェクはローレンツ変換を空間の「歪み」と捉えているのかなとも思うが、ローレンツ変換は空間の歪みとは関係がない。
もちろんこれらは、ジジェクとしてはお遊びとして軽い気持ちで使ったレトリックだと思うので、いいようなものだが、お遊びだからこそ、正確に使ってほしかったとも思うのだ。もちろん「サイエンス・ウォーズ」とかなんとかという気はまったくない。完全にはったりで現代数学を使っているクリステヴァなどとは、同一視すべきではないと思っている。