子規歌集
- 作者: 正岡子規,土屋文明
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1986/03/17
- メディア: 文庫
- クリック: 4回
- この商品を含むブログ (12件) を見る
くれなゐの二尺伸びたる薔薇の芽の針やはらかに春雨のふる
などもあるが、何といっても最晩年、既に床から離れられなくなってからのものと思われる作が、技術的な巧拙を離れておもしろかった。精神が研ぎ澄まされているような中で、健康な者なら何でもないような些細なことに、感動する力が宿っているのである。藤の花や菫の束を送られて喜び、新聞で通俗的と思われるような美談を読んで感動し、雨中で傘をさされた牡丹に注目する。
君が手につみし菫の百菫 花紫の一たばねはや
やみてあれば庭さへ見ぬを花菫 我が手にとりて見らくうれしも
玉透(たますき)のガラスうつはの水清み 香(にほ)ひ菫の花よみがえる
もちろん、病んでいたからといって、誰でもこのような歌が詠める筈はない。『墨汁一滴』や『仰臥漫録』などと同じで、子規の天分と境遇がもたらした、ちょっと他には類例のないような果実なのだと思う。
※柴田宵曲の子規伝について [id:obelisk1:20080717:1216271334]
- 作者: 正岡子規
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1984/03/16
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 9回
- この商品を含むブログ (14件) を見る
- 作者: 正岡子規
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1983/11/16
- メディア: 文庫
- 購入: 3人 クリック: 56回
- この商品を含むブログ (47件) を見る