佐藤優と超越性

面白くて一気に読まされたが、知的なバックボーンが貧しい自分には、何と言っていいかわからない。以下は凡庸な感想文である。
 本書の紹介にもある通り、著者にとって「絶対的なものはある。ただし、それは複数ある」ということで、それら絶対的なものとは、書名にある「国家」と「神」と「マルクス」だというのだが、たとえ複数あろうが、著者の思考の中では、それらを頂点としたツリー型のハイアラーキーが形成されているとおぼしい。自分に引き付けて考えてみると、自分には著者の持っているような意味での「超越的なもの」が、果してあるのだろうか、と思ってしまう。そこが自分の貧しさなら、もう仕様がない。
 それから、世界のインテリジェンス界隈の人々に、柄谷行人の分析を語って感銘させるというのには、驚かされた。やはり柄谷は偉大なのだな、と言わざるを得ない。また柄谷を読み返す必要があると思わされた。