エデルマンの傑作シューマン・アルバム

シューマン:交響的練習曲、幻想曲、アラベスク

シューマン:交響的練習曲、幻想曲、アラベスク

前作のバッハ・アルバムには感激して、感想を書いた(id:obelisk1:20090326)くらいだったので、このシューマンピアノ曲を集めたCDも期待して聴いた。そして、その期待は裏切られなかったと云える。一聴してすぐに思ったのは、これはとてもロマンティックな演奏だな、ということだった。シューマンのような、まさしくロマン派の典型のような音楽をロマンティックに弾くというのは、当り前そうで、実はそうでもない。実際、自分の好きなシューマンの演奏は、ポリーニリヒテルのように、基本的にイン・テンポで、構築性のはっきりしたものだ。だから、極端なまでにテンポを動かすエデルマンのシューマンは、始めはちょっと当惑させられもした、というのが本音である。けれども、この演奏の面白さがわかってくると、名演だなと思われた。前にも書いたが、(虹色の、とでも云うべき)音色がたいへん魅力的で、とりわけここでは、強音の迫力が素晴しい。幻想曲op.17の第二楽章のように、あまり気負って弾くとうるさくて単調になるところも、このピアニストとは相性がいい。交響的練習曲op.13にはポリーニの超名演があるが、このエデルマンの美しい演奏にも、充分に存在価値がある。(なお、死後出版の五つの変奏は、ポリーニ盤と同じく、第五変奏と第六変奏の間にまとめて挿入してある。これがベストのやり方ではないか。)
 このロマンティシズムがエデルマンの真骨頂かどうかまではまだわからないが、これからの録音がますます楽しみになってきた。