日本史に「デモン」を見いだす

魔の系譜 (講談社学術文庫)

魔の系譜 (講談社学術文庫)

この本の題名にある「魔」、延いていえば「魔的なもの」というのは、それぞれ「デモン」「デモーニッシュなもの」ということであろう。「著者の原点」といわれる本書は、日本史から、このような「デモーニッシュなもの」を引き出してこようという試みと云えるかもしれない。一種異端的な日本史、また民俗学の書であり、最近ではこのような切り口の本は珍しくないが、本書の試みは、それらより遥かに先駆けているのではないか。これは著者の性向に深く由来しているらしく、文体の熱を帯びたような調子が、それを物語っている。もちろんトンデモ本でも、時流に迎合したものでもない。
 例えば崇徳上皇の祟り、キリシタンの殉教と異様な「苦しむ神」の伝承、日本人と「たましい」の問題、再生と転生、憑き物と「犬神」「蛇神」等々、著者の選んだ題材を見れば、その関心の程がわかるだろう。個人的には結構好きな話題なので、頁を繰るのが楽しかった。なお、転生について書かれている中で、平田篤胤(この人も「魔」に見入られた人物だ)の『仙境異聞』『勝五郎再生記聞』は、岩波文庫で読めることを付記しておこう。
仙境異聞・勝五郎再生記聞 (岩波文庫)

仙境異聞・勝五郎再生記聞 (岩波文庫)