山口昌男の講義録

新書479学問の春 (平凡社新書)

新書479学問の春 (平凡社新書)

ホイジンガの『ホモ・ルーデンス』を読むという、著者の連続講義の記録である。ホイジンガの記述を丹念に追うというよりは、自由につまみ食いしながら、著者の博覧強記を披露するという態のもので、脱線につぐ脱線が著者らしく愉快だ。全体としてはこれまでの「山口学」を出るものではなく、中に閉じて、逃走線を引き損なっているようにも見えるのは、まあ残念といえば残念であるが、知のネットワークに敏感な点は相変らずで、ホイジンガがオランダのライデン大学の知的サークルにあって、その利点を上手く活用している様子を活写するところは、確かに著者らしくて面白い。
 ちょっと揚げ足を取っておけば、熱力学の第二法則を定式化したのは、カルノーではなくてクラウジウスです(p.256)。その後のネゲントロピーの説明も滅茶苦茶なので、真に受けないようにしましょう。
 しかし、著者が病気で入院中というのは、よくわからないが心配だ。早く御元気になられますように。
ホモ・ルーデンス (中公文庫)

ホモ・ルーデンス (中公文庫)