ポリーニのバッハ、平均律第一巻のディスク
- アーティスト: ポリーニ(マウリツィオ),バッハ
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2009/10/21
- メディア: CD
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そして、期待は裏切られなかった。いつものごとく明晰で、明るく美しいバッハになっている。(ペダルは多めに使われている。)冒頭の前奏曲はきわめてやさしい曲だが、このやわらかい美しさは、リヒテルと双璧だろう。全体の印象としては、表現の幅がますます広くなっている、ということだ。これは、極端から極端へという意味ではなく、微細なニュアンスの弾き分けが、見事だというのである。とりわけ、前奏曲がこれほど多様な音楽だというのは、この演奏を聴いていると驚くほどだ。個人的には例えば第12番の前奏曲が好きなのだが、このさみしさを表現して、初めて納得する演奏に出会えた。
総じて、これまでのグールド、リヒテル、グルダなどの名盤を超えるものと言いたい。おそらく、これから繰り返し聴くディスクになると思う。第二巻も楽しみだ。
追記
最近聴きなおしていると、ポリーニの音楽の作りのうすっぺらさが気になる。かつてはこんなことはなかった。あれだけ重層的な、音楽語法的に完璧な演奏を作り上げていたのに。既に伝統が軽い。(12/1記)
いや、そうとばかりも云えないか。この演奏の評価はむずかしい。素晴しいと思う時もある。(12/8記)