中沢新一らによる『思想家 河合隼雄』

思想家 河合隼雄

思想家 河合隼雄

中沢新一と河合俊雄の編になる『思想家 河合隼雄』読了。中沢新一、河合俊雄、鷲田清一赤坂憲雄養老孟司らによる河合隼雄論集である(河合隼雄の論文も一本収録。海外講演の翻訳である)。こんなブログなどではあるが、自分の書いているものが単なる言葉の操作ではないかどうか、考えさせられる。そういうこちたいことは、頭の良い人たちに任せておけばいいのだ。中沢や河合隼雄を読んでいると、いま本当に必要なのは、そういうことではないと痛切に思われる。本書の言葉を使えば、「哲学」よりも「思想」を、ということである。中沢に拠れば、河合隼雄は「思想家」ではあったが、「哲学者」ではなかったという。それは確かに、簡単なことではないのだが、だからこそ必要なのだ。
 エピソードで面白かったのは、鷲田が書いているのだけれども、河合は柔和な笑顔で知られているが、時に実に厳しく怖しい顔になることがあった、というのだ(南伸坊も同じようなことを書いていた)。対談の際に河合がそういう顔をしてしばし沈黙し、それに気おされた鷲田はその間、一言も言葉を発することができなかったという。中沢も、河合と面していると、剣豪と対峙しているかのような、緊張感を覚えることがあったと書いている。それは、吉本隆明と面しているときにも匹敵した、と。
心理療法個人授業 (新潮文庫)

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