- 作者: 三中信宏
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/09/17
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本書の全体を繋いでいるのは、いわば「『種』というものは実在するのか」というライトモチーフである。これは中世スコラ哲学の「普遍論争」そのままで、唯名論者と実念論者の間に有名な論争があった。これはもちろん本書も指摘しているし、また決着のつかない問題とも思われるので、ここでは深入りしない。ちなみに著者は、ノミナリストもリアリストも選択しない立場のようである。
それから、「種」に「分ける」ということは、種の中に何らかの「類似性」がないといけないわけだが、そこでその類似項を指す「ソータル」という概念があるのは、修辞学で類似性に拠る「メタファー」とも関連して、おもしろく思われた。
こうして本書の形式的な内容ばかり強調してしまったが、また著者の旺盛な知的雑食性も窺えるのであって、領域横断的な細部も意外性があって楽しい。シェーンベルクが聴きたくなる思想書は、なかなかないものだ。
あと、取りとめもない感想を。「種」は実在するという日本の実念論者、今西錦司は本書では採り上げてないが、今西の「種の棲み分け」というのは、著者ならどう料理するだろうか、気になった。また、同じく日本発の「分子進化の(ほぼ)中立説」は、これも著者的にはどうだろう。
しかし、本書の枠からは逸脱するが、物理学的な観点から見ると、量子力学で記述される粒子などは、「普遍論争」の立場だと大変奇妙なことになる。素粒子には、「個」というものがないからだ。統計から言えるのだが、例えば電子Aと電子Bというのは、交換してもまったくわからない。それどころか、AやBなどと名前をつけることすら、良くないかもしれない。いわば、「個」がなくて「種」だけしか存在しないかのようなのだ。このような事実が事物(生命も含む)の元にあるというのは、実に奇な話ではないだろうか。
- 作者: 三中信宏
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- 作者: 山内志朗
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