斎藤環の男女格差本
- 作者: 斎藤環
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/09/17
- メディア: 新書
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といって、自分にとって本書がまったくのダメ本であったかというと、そうでもない。「若者文化」に詳しい著者であるから、個々の具体的事例(特に「おたく」や「腐女子」のそれ)には、なかなか興味深いものがあった。そして、男女の身体感の違いについてさらりと語られた部分には、まったく驚かさせられたのである。
たとえば女性はしばしば「もうからだがぼろぼろ」といった言い方をする。そういう表現を実際に口にするかどうかは別として、ほとんどの女性はこの表現に共感できるだろう。ところが、女性には驚きかもしれないが、一般に男性はこの表現を理解できない。ある種の衰弱や疲労を「ぼろぼろ」と表現するのはわかるが、身体がぼろぼろとはどんな感じなのかが、実感的にどうしても理解できないのだ。
男性にとって身体は「透明な」ものであり、痛みや痒みなどがあってようやく存在し始める、というのは、自分の実感からしても、まったくその通りである。女性のいう、身体は「くっついちゃってる」「容れ物みたい」というのは、確かにそうなのかも知れない。リストカットをするのが八割がた女性だというのも、そうするとわかるような気がする。
あと、主題からは少し離れているかも知れないが、「おとこソファー」というのも面白い。「おとこソファー」というのは、「仕事で疲れ切って帰宅した独り身の女性を優しく包み込み、癒してくれる素敵な家具」だそうである。女性の夢だろうか。ああ、自分など、到底そんなものにはなれそうもないが。