洲之内徹の生涯

彼もまた神の愛でし子か―洲之内徹の生涯 (ウェッジ文庫)

彼もまた神の愛でし子か―洲之内徹の生涯 (ウェッジ文庫)

洲之内徹については福田和也の本で教えられ、有名な美術随想『きまぐれ美術館』のシリーズも、文庫版で読んで感服していた。『きまぐれ美術館』を読んでも、また福田の文章に拠っても、洲之内という人は並大抵の人ではないとわかってはいたが、大原富枝の手に成る本書を繙き、その生涯に驚愕せざるを得なかった。特に、生涯に亙る多数の女性関係の凄惨さというのは、自分の理解を超えている。美術随想のあのどこかノンシャランな様子(時折凄みを感じないわけではないが)からは、ちょっと想像できないほどである。洲之内の美を見る目だけではなく、確かに彼の生涯自体も、著者が追求するだけの価値があった。そこに現れるのは、修羅に他ならない。そのようなものを背負ってしまったのはどちらかといえば不幸なのだろうが、洲之内の美を見る目も、それなくしてはありえなかったのである。
絵のなかの散歩 (新潮文庫)

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気まぐれ美術館 (新潮文庫)

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帰りたい風景―気まぐれ美術館 (新潮文庫)

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