吉田満『戦艦大和ノ最後』

戦艦大和ノ最期 (講談社文芸文庫)

戦艦大和ノ最期 (講談社文芸文庫)

悲哉。何という悲しい本だろう。明治からこの戦争を経て、現代に至るまでを連続体として繋げると、思いは悲しいとしか云いようがない。本書は恐らく、日本語で書かれた最高の叙事詩であるが、(大岡昇平の『レイテ戦記』がトゥキュディデスだとして、)これは『イリアス』が叙事詩だという意味で、そう言うのである。しかし、発表当時から、本書が戦争賛美の文学だとして非難の声が挙ったそうだが、馬鹿げた話だ。これはむしろ、我々の誇りである文章だろうに。本書で臼淵大尉はいう。
「進歩ノナイ者ハ決シテ勝タナイ 負ケテ目ザメルコトガ最上ノ道ダ
日本ハ進歩トイウコトヲ軽ンジ過ギタ 私的ナ潔癖ヤ徳義ニコダワッテ、本当ノ進歩ヲ忘レテイタ 敗レテ目覚メル、ソレ以外ニドウシテ日本ガ救ワレルカ 今目覚メズシテイツ救ワレルカ 俺タチハソノ先導ニナルノダ 日本ノ新生ニサキガケテ散ル マサニ本望ジャナイカ