重力は本当に逆二乗則に従うか

「余剰次元」と逆二乗則の破れ―我々の世界は本当に三次元か? (ブルーバックス)

「余剰次元」と逆二乗則の破れ―我々の世界は本当に三次元か? (ブルーバックス)

通常、空間は三次元だとされているが、実際はコンパクト化された余剰次元が存在するのではないか、というのである。これは、カルツァ=クライン理論など、従来からあるもので、超弦理論では時空が十一次元だとかは、一般人でも理科好きなら、知っている人は少なくないと思う。本書の新味は第五章以降で、1998年に登場した「ADD模型」の紹介がされてある。これは、コンパクト化された余剰次元プランク長程度ではなく、数cm程度の「大きな」距離になっているというものである。これは超弦理論ではないが、その研究成果上に誕生した理論であるらしい。こうすると、重力の極端な弱さがうまく説明される、というのだ。
 さらに、この理論を認めると、短い距離では、重力が逆二乗則に従わなくなるという。本書のもうひとつの面白いところは、実際に短いスケールでの重力の到達を測定するため、著者の研究室で、なんと家庭用ビデオカメラを用いて、手作りで高い精度の実験装置を造ってしまうところにある。このオリジナルな研究を元にして、いまでは世界のトップとわたり合える実験をやっているというのだが、これは楽しいだろうな。著者のワクワク感が伝わってくるようだ。ブルーバックスも楽しいね。