柳沼重剛の好著
地中海世界を彩った人たち―古典にみる人物像 (岩波現代文庫)
- 作者: 柳沼重剛
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/11/16
- メディア: 文庫
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「…文に関して『短さ』ばかりを強調する風習は、日本語にはいわゆる複文構造(従属節、あるいは分詞構文などプラス主節という構造)が少ないことに由来していると思います。ヨーロッパの何語でもいいですが、複文で書いてある原文を、日本語でも複文に訳すと、たちまちいわゆる直訳調の文になってしまうことが多いです。しかし、複文を用いると、文は長くなりますが、それによって、短い文を並べただけでは得られない、別種の明晰さを得ることができ、それがまさに弁論術が最も大きな効果を発揮する場となるのです。」
「こういう複文のことをギリシア語でperiodosと申しました。これは『ひと巡りの道』、文章があるところから出発して、収まるべきところにぴたりと収まる、という意味です。アリストテレスはこういう文章は読んでいて気持ちがいいと言っています。なぜ気持ちがいいかというと、ある所まで読み進むと、その文の終わりが見えてくる、そしてその終わりに向かって進んだ文が、期待どおりそこにぴたりと収まるからなのです。」