またまた仲正昌樹のヒット

〈宗教化〉する現代思想 (光文社新書)

〈宗教化〉する現代思想 (光文社新書)

題名だけ見ると際物っぽい感じだが、中身は堂々たる哲学の書。著者は形而上学という語を、証明不可能なことについてあれこれ思い巡らすこと捉え、「形而上学を超えた」などと言っている人間が、別の種類の形而上学(これはある種の「宗教」とあまり変わりない)に陥っていることが多いという事実を指摘する。それではどうすれば良いのかというに、結局、形而上学から逃れることはできないが、その「できない」ということを自覚してものを言わねばならない、そうするだけで違う、ということになる。
 それにしても仲正昌樹はいつもながらシャープで、デリダドゥルーズの読解についても教わることがたくさんある。例えば、こんな文章。
「…しょっちゅうネットを利用して、ネット上に書き込まれている他人の言葉をコピペして、“自分の文章”を作っている内に、他人からの借り物の言葉、台詞、考え方を、自分のオリジナルな生き生きした言葉と勘違いするようになる若者は多い。それも広い意味での『音声中心主義』である。」
パロール」は話し言葉だけに限らないのだ。