シヴァとディオニュソス

シヴァとディオニュソス 自然とエロスの宗教 (芸術人類学叢書)

シヴァとディオニュソス 自然とエロスの宗教 (芸術人類学叢書)

野生のエネルギーと危険に満ちた書物。著者の主張するように、本当にインドのシヴァ神ギリシアディオニュソスが共通の神かどうかは分らないが、極めてよく似た役割をもつことは、本書の記述から明瞭である。しかし、著者が結局言いたいのは、キリスト教(さらには一神教)への糾弾だ。キリスト教はイエスの宗教ではなく、イエスの宗教にはディオニュソス教的な性格があるとされる。(とすると、ニーチェの問題意識とは少し違うといえようか。)もちろん現代において、人身供犠のような、シヴァ=ディオニュソス教的な儀礼の不可能であることは、著者もよく弁えているが、人間の性質の中の暗黒面を見据えることは、今後ますます必要になってくることであろう。