いかに系外惑星は発見されたか
- 作者: 井田茂
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2003/05/01
- メディア: 単行本
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しかし、そうではなかったのである。実に半世紀ものあいだ、太陽系以外の惑星(系外惑星という)は探し求められつづけてきたのであるが、それは見つからず、一九九五年八月には、著名な研究者が「系外惑星はない」というレポートを纏めあげるまでに追い込まれていた。
ところがその二箇月後、史上初の系外惑星が発見されたのだった。他の研究者たちは半信半疑だったが、次々に追試が成功し、それは誰の眼にも疑えなくなった。どうして今まで発見されなかったのか。それは、その惑星が、中心の恒星から0.051天文単位というおそろしく近くを、公転周期4.2日という短期間で周回し、その質量は木星の半分という大きさであったからだ。そのような惑星が存在することを、誰も予想していなっかたのである。それには「ホット・ジュピター」という魅力的な名前が付けられた。また、それ以降次々に発見された系外惑星の中には、木星並みの質量を持ちながら、楕円軌道の離心率が極端に大きい、「エキセントリック・プラネット」というものも発見された。「エキセントリック」というのは、本来の「楕円軌道の」という意味に、「常軌を逸した」というのが掛けてあるのはいうまでもない。
ここから、惑星形成理論の話になるのだが、ここで活躍するのはまたしてもコンピューターである。今の理系の分野の大半の研究で、コンピューター・シミュレーションを抜きにしては話がまったく進まないほどである。それが詰まらないというのではないが、しかし、著者もコンピューター・シミュレーションをやりながら、「自然(擬似自然かもしれないけど)の奥深さに感銘を受ける」と思わず洩しているけれども、この発言などどうであろう。コンピューター・シミュレーションが「自然」? ここでのコンピューターは、ほとんど「ラプラスの魔」ではなかろうか。