荻上チキによる学校裏サイトの実態

ネットいじめ (PHP新書)

ネットいじめ (PHP新書)

学校裏サイト(著者は「学校勝手サイト」と呼んでいる)とネットいじめについての基礎的な議論と啓蒙を行なっている本。著者は十代の頃から電子メディアを使い、よく知られたブロガーでもあって、ネットについて多くの知識を有するばかりか、メディア論者でもあって理論的な確乎たる基盤を持っているという、このような本を著すにはまさしく適任な書き手だといえよう。
 教えられる点は多かったが、印象的だった点を幾つか挙げると、まず学校勝手サイトの内、「裏」化しているのは極く一部だということ。大人の使うサイトに比べて、荒れている割合はむしろ少ないということ。これらから、総じて子供の方が新しいメディアに対して成熟していて、うまく使っていることがわかる。それから、ネットいじめのようなことは確かにあるが、ネットが原因であるというよりは、ネット外の実生活に存在する問題が、ネットで可視化されているのが殆どだということ。
 これらから考えるに、ネット世代の子供たちが大人になっていけば、社会の中のネット・リテラシーも自ずと向上していくと思われよう。ただ、少し気になったのは、高校生に聞くと、自分がネットをやって問題はなかったのに、中学生では早すぎるから規制すべきだと言い、そこで中学生に聞けば、小学生は規制せよなどという型の言説がかなりあるということだ。これは大人社会の言説の構造にまったく同型なのであって、なにやら嫌な感じなのである。それこそネットだけの問題ではない。