高学歴兵士たちの憂鬱

高田里惠子の本は、先に読んだ『文学部をめぐる病い―教養主義・ナチス・旧制高校 (ちくま文庫)』や『グロテスクな教養 (ちくま新書(539))』が、エリートや旧制高校的教養の嫌らしさの(殆ど自虐的とも言いたいほどの)剔抉をやっていて面白かったので、本書も読んでみた。もちろん学問的に判断する力はないが、第二次世界大戦のときの高学歴兵士についてよく調べてあって、期待に違わなかった。一般に高学歴で戦争に召集された若者は、有名な丸山眞男のエピソードにあるように、軍隊の中で古参兵にいびられたなどという通念があるが、本書によると、そんな簡単な話ではないことが分る。
 こう書いてきてどうしても思い出してしまうのが、最近話題を呼んでいる赤木智弘の一文である。これについては、本書のあとがきから引用しておこう。
「ただ、本書を読みすすんでいただいた読者の皆さんには、『中学にも進んでいない』者たちのほうが当時は八割以上を占めていたこと、『希望は、戦争。』ではなく『希望は、陸軍。』もしくは『希望は、徴兵制。』と表現したほうが正確であること、しかし帝国陸軍もそう単純に平等世界ではなかったことが、すでに明らかであろう。」
 一言呟いておけば、戦争について読めば読むほど、戦争はまっぴら御免だというのが偽らぬ感想である。大体不器用な者としては、真っ先に戦死しそうでかなわないのだ。要領よく立ち回って生き延びるならのびたで、戦死したものに対する申し訳なさとでもいうものに苦しめられるのは、分りきった話である。前大戦は、そういう人々を多く作りだしてきたのである。本書の意義は、そうしたことを明るみに出したところにもあるのだ。