林達夫について
- 作者: 高橋英夫
- 出版社/メーカー: 小沢書店
- 発売日: 1998/09
- メディア: 単行本
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しかし、不満がまったくないわけではない。また個人的なことになるが、自分が林に惹かれ続けてきたのは、内容も勿論だが、そのスタイルの魅力が大きかった、ということがある。実際、林達夫は、日本語の散文家として最高の一人であろう。あの(澁澤龍彦の言を藉れば)「ギャランな」調子、そしてあの驚異的な明晰、これらは一体どこからきたのか。確かに、論じにくい対象ではある。しかし、高橋はせっかく林の「思想の文学的形態」の重要さを指摘しながら、林自身の文章に対しては、これを適用することを怠っている。
高橋が林との個人的な関係について語っているところや、巻末の鼎談も面白かった。それにしても、林について語る人の口ぶりは、ほぼ例外なくオマージュになってしまう。まったく林達夫というのは、それにふさわしい人だった。