ポリーニの新録音はすばらしい

ショパン・リサイタル

ショパン・リサイタル

ここ二、三年のポリーニのディスクは、随所に閃きを見せながらも、諸手を挙げて賛成という訳にはいきかねるものが少なくなかったので、このオール・ショパンのディスクも、期待半分というところで聴き始めたが、嬉しいことに期待はよい方に裏切られた。若い頃のようなイン・テンポではなく、テンポは微妙にゆらぐが、もしかしたら壮年期のとき以上に、まったく充実した音楽が聴かれる。出るところは出、引くところは引くといったように、バランスがよく取れているところがいい。もうほとんど死語と化した、「巨匠風」という言葉を進呈したいほどだ。収められた曲すべてが名演だと思う。
 再録音があるのも、ポリーニにしてはめずらしい。旧録音と比べるとよくわかるが、より「文学的」というか、感情移入が聴き取れる演奏になっている。ソナタの「葬送行進曲」も、より怖い(?)ような感じだ。その他の新録音のマズルカ作品33、ワルツ作品34、即興曲第2番などもすばらしく、即興曲などは他の曲も録音してほしいと思う。
 とにかく、この先の録音が楽しみになった。名盤ラッシュの予感である。