このケルアックは期待外れ

地下街の人びと (新潮文庫)

地下街の人びと (新潮文庫)

前に読んだ([id:obelisk1:20081021])『路上』と『ダルマ・バムズ』がとても面白かったので、この二作の間に書かれた本作も読んでみたが、正直言って、これはかなり期待外れだった。ひと言でいうと、悪い意味で文学的すぎて、『路上』や『ダルマ・バムズ』のような天衣無縫さがない。また、話が全体的に暗くて、はじけるような明るさもない。著者には、陰々滅々とした恋愛小説(?)は向いていないように思われる。本書はベンゼドリンをやりながら三日で書き上げられたらしいが、そのせいもあるかも知れない。二十世紀の小説のひとつのパターンである、「意識の流れ」の手法が本書の売りのひとつかも知れないが、これもあまり成功しているとは思えない。とにかく、酒や麻薬で乱れた生活を描いただけという代物で、それに衝撃を受けなければそれまでのことである。