- 作者: 藤原保信
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1993/08/20
- メディア: 新書
- 購入: 6人 クリック: 65回
- この商品を含むブログ (46件) を見る
それに対し、私有財産の否定である共産主義(著者は社会主義の語も同様な意味で用いている)を、マルクスを中心にして述べたのが第二章で、これもまたクリアに記述されている。
第三章は、ロールズ、ノージック、ドゥオーキンなどの現代の自由主義論者を取り上げ、コミュニタリアニズムを紹介して終っている。著者の同情は、この最後者にある。
第三章から、興味深かった部分を脈絡抜きで引用しておこう。
「今日のおおかたの社会科学が、意識的にせよ無意識的にせよ功利主義をみずからの価値前提としていることは明らかであろう。」
「ロールズ、ドゥオーキン、ノージックのいずれも、このうち善(the good)への問いを各人に委ねつつ、もっぱら正(the just)のみを行為や制度の判断基準として立てるのである。」
「あらゆる社会と同じく今日の社会においても、さまざまの不平等も存在し特権も存在する。にもかかわらずそのような社会で、価値相対主義を唱えることは、結局のところ、既存の不平等や特権を放任し、時には隠蔽し、結果的にそれを擁護することにならないであろうか。」
「J・ハーバーマスは、今日における世界像の分裂を前提としながら、もはやいかなる実質倫理も不可能とし、今日可能な唯一の倫理は意思疎通倫理であるとした。」