宇野常寛を読んでみた

ゼロ年代の想像力

ゼロ年代の想像力

自分はこの本の、あまり良い読者ではなかったようだ。半分ほどまで精読したが、退屈で残りは拾い読みをした程度である。まあ、自分の感性が時代からずれているせいでもあろう。とにかく演繹的な断定が多く、同じ論旨の反復が人を疲れせしめずには措かない。結局著者が繰り返し立ち戻るのが、もはや引き籠ってはいられない、「バトル・ロワイヤル」に「サヴァイヴ」しなければ、生きていくことすらできない、という時代性(と著者が規定するのだが)である。(いつの時代でも「サヴァイヴ」は大変だという気もするが、まあそんなことは言わないこととしよう。)著者はまた「決断主義バトル・ロワイヤル」という言葉も用いているが、これは何らかの形で克服すべき状況だと捉えているようだ。著者よ、ここにあなたのイデオロギーがあるのではないでしょうか?
 それから、著者はどうも批評タームの用い方がぞんざいな点がまま見られるのは残念だ。例えば、わざわざ「否定神学」などという語を使う必要はまったくない。
 とにかく、この本を再読するような事態に立ち至れば、たぶんそれは良いことなのだろうと思う。