宇宙論の驚くべき発展

宇宙論入門―誕生から未来へ (岩波新書)

宇宙論入門―誕生から未来へ (岩波新書)

「インフレーション宇宙」の理論の開拓者による、宇宙論の入門書であるが、結構むつかしいものになっている。もともとの理論は、インフレーションの原因として真空の相転移を用いていたが、現在では「量子論的密度ゆらぎ」が原因だというのが通説らしい(どういう意味なのかわかるでしょうか)。インフレーションの最中では真空のエネルギーが零ではないのだが、観測によると現在の真空のエネルギーは零ではないらしく、いまは(きわめてゆるやかな第二の)インフレーションの只中である可能性があるという。それから勘違いをしていたのだけれども、現在の宇宙は加速膨張しているのだが、そこからビッグ・クランチに至る可能性もあるらしい。
 驚くべきことに、現在の宇宙の標準理論のルメートル解は、理論と観測値がほぼ完璧に一致するらしい。計算機シミュレーションも、現在の宇宙の姿をみごとに再現するという。もちろん宇宙の謎がすべて解き明かされたわけではないが、宇宙論がここまで進んでいたとは凄い。あとは、量子重力理論の完成が、宇宙論にどのような発展をもたらすか、楽しみである。
宇宙論については、[id:obelisk1:20080710], [id:obelisk1:20080729]なども参照。