マルグリット・デュラス

夏の夜の10時半 (河出文庫)

夏の夜の10時半 (河出文庫)

一家でのスペイン旅行、妻のマリアはアルコール中毒らしい。夫と、一家とはどういう関係にあるか今ひとつ不明な女性クレールとの、疑わしい関係。そこで、ロドリゴ・パエストラなる土地の男による、痴情のもつれの殺人。一家は部屋のとれないホテルの廊下で一夜をすごす。夫とクレールの仲を気にしてか眠れないマリアが、ロドリゴ・パエストラを見つける。彼を車で逃がす。翌日、マリアはその出来事を夫とクレールに話す。一行は奇妙な雰囲気で、ロドリゴを逃がした地点まで車で行くが、灼熱の太陽のもと、男はすでに自殺していた。さらに奇妙な雰囲気。旅行を続けるが、結局夫とクレールは情事を果たす。エア・ポケットに落ち込んだ夫。愛を終らせるマリア。
 マリアの歪んだ意識の反映であろう、意図的になされた、茫洋とした描写が利いている。三角関係が陳腐に見えないあたりはさすがだ。