アフォーダンスについて

アフォーダンス (複雑系の科学と現代思想)

アフォーダンス (複雑系の科学と現代思想)

アフォーダンスというのは、環境による被拘束性ということで、最初はどこが新しいのかよく分らなかったが、どうやら(同じことをする場合でも)周囲の異なった状況に応じた生命の反応の(微小な)違いを、特に強調する概念のようだ。茶碗で御飯を食べるにしても、状況に応じて体の反応はいろいろ変ってくる、というようなことである。
 鼎談の部分がいちばん面白かった。生の素材がごろごろ転がっているという感じで、クリア・カットからは程遠かったけれども、それはそれで刺激的だった。とりわけ興味深かったのは、蚯蚓の胴体を切断したあとで紐で結び付けると、神経などはもちろん切断されているにもかかわらず、運動の波は前から後ろまで、あたかも連続しているかのように進んでいくという事例である。
 あと、キー・タームとして摩擦(スリップ)というのが頻出するが、ちょっと判りにくかった。しかし、物理学的な現象としてはマクロな「摩擦」というのは、とても説明の難しいそれであるから、その辺りに関係してくるのだと思う。それから、「フィードバック」という概念はまったく登場しなかったのだが、これはどうしてなのだろうか。