宮脇俊三の鉄道紀行は楽しい

線路のない時刻表 (新潮文庫)

線路のない時刻表 (新潮文庫)

鉄っちゃん」(鉄道マニアのことをこう呼ぶ)というほどではないが、鉄道に乗るというだけで、結構楽しい部類である。学生のときには、京都から三日間かけて、青春18きっぷで九州を一周してきたこともある。そういう楽しみを教えてくれたのが、宮脇俊三の本だった。国鉄全線を完乗した記録である処女作、『時刻表2万キロ』を読んで、この世界に目を開かれ、国鉄の路線を最も長い一筆書きで行く『最長片道切符の旅』などは、この浮世離れしたテンポにあやかりたくて、何度も読み返したほどである。
 この本もただただ楽しい本なので、特に何も書かないが(とりあえず、建設が中断した未開通路線を訪ねる旅行記、とだけ言っておこう)、宮脇さんはオタクではないことを強調しておきたい。別にオタクを蔑視するつもりはないが、「いい大人がこんなことに熱中して」という客観的な視点があるからこそ、たんなる自己満足ではなく、人に読んでもらえる文章になっているのだと思う。また、その文章自体もいい。マニアだけのための本ではないのである。『時刻表2万キロ』には、開高健も感心していたことを、付言しておこう。
 それにしても、JR全線完乗はとても無理だが、名鉄全線くらいなら充分可能だし、これはひとつやってみたくなってきた。セントレアでも行くか。JRのローカル線なんかもいいな。中部地方の人なら、名古屋から関西本線に乗って、柘植から草津線に乗り換え草津まで行き、東海道本線で名古屋へ帰ってくるなんていうのも、結構お勧めですよ。どこへも立ち寄らない「阿房(あほう)列車」(内田百輭)なら、さらに完璧です。
時刻表2万キロ (河出文庫 み 4-1)

時刻表2万キロ (河出文庫 み 4-1)

最長片道切符の旅 (新潮文庫)

最長片道切符の旅 (新潮文庫)

第一阿房列車 (福武文庫)

第一阿房列車 (福武文庫)