アファナシエフの弾くモーツァルト

偶々これは今まで持っていなかったのだが、これまで聴いたアファナシエフのCDの中で、最も感銘を受けた。ライナーノートに中沢新一の寄せたエッセイがあるが、これが簡にして要を得ているので、一部引用しておこう。
アファナシエフは、異様に遅いその演奏によって、モーツァルトの音楽のなかから、この深層律動の部分を、意識に浮上させようと、こころみている。彼の異様に遅い演奏は、ここでも特有の微分作用を発揮して、深層律動の上に積み重ねられ、それが意識に浮上しないようにはたらきかけていた、保護フィルターを解除してしまうのである。その結果、心地よいモーツァルトの音楽の深層から、深く宇宙的なものに開かれた、不気味な『別種の美』が、私たちの前に、たちあらわれてくることになった。」
ちなみに、遅い部分だけでなく、ソナタK.457の終楽章はアファナシエフにしてはテンポが速いが、これも素晴しいと云っておこう。アファナシエフ自身の解説も難解だが独特で興味深いと、付言しておく。