デカルトの『哲学原理』

哲学原理 (ちくま学芸文庫)

哲学原理 (ちくま学芸文庫)

新訳。文庫では既に岩波文庫に入っている(第一部と第二部の訳)が、本書は第一部のみの全訳であり、岩波文庫版の桂寿一訳よりは読みやすいと思う。自分はほとんど飛ばして読んだが、訳者の「解釈」という部分が大変に詳しいのが特徴だ。神についての部分を除けば、煎じ詰めると、いかにして正しい認識を得るか、いかにして誤謬に陥らないか、というのに終始している本だという印象。どうしてそのようなことばかりを述べているかというに、デカルトは己のシンプルで判明な(と自分で思っていた)思想が世になかなか受け入れられず、仕方なくスコラの教科書的なスタイルで、啓蒙に取り掛かったのだと思われる。(そしてそれは成功しなかった。)林達夫の「デカルトのポリティーク」(『歴史の暮方』所収)を参照。
歴史の暮方 (中公文庫)

歴史の暮方 (中公文庫)