小さな町を旅するということ

なぜかいい町 一泊旅行 (光文社新書)

なぜかいい町 一泊旅行 (光文社新書)

これは楽しい本だ。日本の、特に有名でもない小さな町をぶらぶら旅して、何かしら満足して帰ってくる、達人の旅行記である。とりわけ、おいしそうな食べ物の話はたまらない。地元産の食べ物を地元で食べるのが、一番なのだ。地元の人と言葉をかわすのも思い出になる。このように、普通の町を普通に歩くというのは、ローカル線に乗る楽しみと似ていると思う(著者は実際に、ローカル線に乗ってもいるのであるが)。旅行がしたくなる。
 しかし、本文を読んでいると何の問題もなさそうな話なのに、あとがきでは著者は、いわゆる「平成の大合併」を憂えているということがある。町の規模は、小さい方がよいのだと著者はいう。田舎の町でそれなりに頑張っていたところが、合併により、遠くの「中央」から紙切れ一枚で動かされ、時には見捨てられる。今までの努力はなんだったのか、と。これは、「地方自治」「地域密着」「地元密着」というスローガンに反するのではないか。自分の住む各務原市も、随分前に合併で出来た市であるが、何十年経ってもなかなか一つになれない。池内さんは、わが市には立ち寄ってくれないかも知れない。