舞城王太郎

熊の場所 (講談社文庫)

熊の場所 (講談社文庫)

舞城王太郎はこれまで文庫三冊を読んだのみで、特に熱心な読み手というわけでもなく、これが四冊目であるが、表題作の「熊の場所」には強烈な印象を受けた。主人公は小学校五年生くらいの少年で、クラスメートの「まー君」というのが、鞄に切り取った猫の尻尾を入れているのを見て以来、その子が急に気になりだし、友達風に付き合って彼の秘密を知ろうとする。そのうち彼の家に泊まるようにもなり、そこで夜、布団の中にいる時、「まー君」が自分を殺したくて煩悶しているのに、殆ど恍惚感さえ抱く……などという話なのだが、どんなものだろうか。自分にはどうもあちらの世界へイッてしまっているような気すらするのだが、今ではこんなのは当り前なのだろうか。他の二篇も、尋常でない殺し方や、グロテスクな死体の描写が凄まじく思われるのであるが。何か、死体とか暴力といったものに対する感性が、一つの回路になって出来上がってしまっていて、どれだけでも残酷に書けてしまう、といった印象を受けざるを得ない。
 まあ自分たちが子供の頃も、マンガなどでグロテスクな描写などはあったわけで、実際自分と同じ世代の阿部和重なども、日常でエスカレートする暴力を描いているし、それに「今の若い子らは」などと言いたくもないが、それにしても、今の子らにこの舞城の描写など当り前なのか、ちょっと聞いてみたいような気がする。それからこれは、もしかして例の、「サヴァイヴでバトルロワイヤル」なのだろうか?
煙か土か食い物 (講談社文庫)

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みんな元気。 (新潮文庫)

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スクールアタック・シンドローム (新潮文庫)

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