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「…過去から継承されてきた種族としての経験を必ずしも信用せず、もっと直接の新しい経験からそれを調べなおす価値を発見した結果が、科学なのです。」(p.225)
「ホンモノの科学者が普通人とちがうところはね、何をやるにしてもほかの人ほど自信がもてないところなんだ。つまり絶えず疑いを持ちながら生きていける。『たぶんこうだろう』と思うことでも、それが『たぶん』にすぎないことを知りながら実行できるんだよ。」(p.249-50)
「よく考えてみますと科学というものは、何が真実であり、何が真実でないかを宣言するものではなく、むしろ確実性の度合いの差を述べるものだ、ということに気がつくはずです。つまり科学の言明というものは、上は『×××が真実である可能性は、真実でない可能性よりもかなり大きい』とか『△△△はほとんど確実ではあるが、それでもなおわずかに疑問の余地がある』というところから、最低のところでは『それはぜんぜんわからない』というところまで、どれを取ってみてもすべてこの確実度のものさしの上で、少しずつちがったところに位置しているわけです。ただし決して絶対の真実あるいは絶対のまちがいという両極端にあることはない、と言っていいでしょう。」(p.295)
といった具合であるが、どうだろう、世間一般の「科学」像とは、ちょっと違うのが分かるだろう。科学的な態度というのは、決して「絶対の真実」を確定するといったものではないというのだ。このようなことを言うと、「科学はアイロニーだ」などという人が出てくるが、馬鹿馬鹿しいといったらない。
彼は、こんなことも言っている。「ともあれ僕らはいままったく非科学的な時代に生きているもので、これでもかこれでもかと押し寄せてくるコミュニケーションも、テレビも、種々雑多な言葉も書物も、どいつもこいつも非科学的の一言に尽きます」(p.229)と。
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