ブナの木がどういうものか、分かりますか?

ブナの森と生きる (PHP新書)

ブナの森と生きる (PHP新書)

著者は森林学というのか、敢ていえば理系の専門家だが、文化史的な記述も立派だ。だいたい、端整な文体が好ましい。照葉樹林帯文化に対するブナ帯文化は、ほぼ東北地方に重なり*1、豊富な木の実・山菜の利用、狩猟や漁労などを通した豊かな文化を育んできたが、米作が中心でないだけで、不当にも一段低い文化と見られていたというなど、最近読んだ赤坂憲雄の本とも重なり合うところがある。また、日本人は自然に対して繊細な感性を持っているなどというが、実際に調べてみると、身近な植物のこともよく知らぬことが多く、むしろヨーロッパ人の方が自然に親んでいる、などというのも、その通りであろう。日本人の自然愛好というのは、どこか抽象的・文学的だというのである*2。まあ、日本の森林は低木が多く、ヨーロッパの森のように、中を気軽に歩くなどできないせいもあるだろうが。
東北学 忘れられた東北 (講談社学術文庫)

東北学 忘れられた東北 (講談社学術文庫)

*1:ブナの木自体は、ほぼ日本全土で見られる。

*2:調査に拠れば、日本人が一番好きな木はなんとブナだというのだが、それなのにブナの木の同定ができないのである。実際、自分もできない。