- 作者: 仲正昌樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/05/19
- メディア: 新書
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まあ取り留めのない感想になるが、西洋思想を徹底して血肉化し、現代の日本に当て嵌めて原理的に考える著者の力は、いま群を抜いていると思う。抽象的な議論なのに、アクチュアルなのだ。例えば、現代の「格差・貧困問題」などについても、自分などは他人事と思えず、つい(単純なと言われても仕方のない)犯人探しをしてしまうことがあるのだが、「弱者に対する共感」という(一見)問題のなさそうな態度が、歴史的に怖しい悲劇を生み出したことを著者は指摘する。フランス革命時の恐怖政治や、ポル・ポト派による大量虐殺などがそれである。これはまったくその通りで、嫌われるのが分っていながら、熱狂化した「正義」がいかに怖しいかを論理的にきちんと指摘する著者は、やはり本物の哲学者だと思う。それにしても、耳に痛かったな。つい紋切型に伝染してしまうのだから。自分の頭できちんと考えるというのは、なかなか難しいことを痛感させられる。