シュルレアリスム絵画と日本 イメージの受容と創造 (NHKブックス)
- 作者: 速水豊
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2009/05/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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自分のことを云うと、これらの中で実見したのは古賀春江だけである。そのせいでもあるまいが、図版を見るに、四人の中で一番印象的だったのは古賀で、実見したときも「シュルレアリスムだな」と思った。本書を読むと確かにそれは西欧的なシュルレアリスムではないが、このモダンな絵画が、どこか日本人の無意識に訴える力を持っているのは確かだと思う。絵のタッチからしても、マグリット的な魅力があるのではないか。マグリットのパラドックスは、ここにはないが。その論理の面白さがないところが、日本的といえば日本的だと思う。
福沢も悪くないが、これは彼の真骨頂ではないようだ。三岸、飯田はあまりにも早世だったように感じる。
本書は、最近読んだ美術本としては最も刺激的だった。この頃思うのだが、日本の近代絵画は、他の同時代文化の分野と同じで、西欧と日本の間で引き裂かれた魂の深刻さが刻印されていて、洵に興味深い。ほとんどが小粒であることを運命づけられているのだが、これがなければ、我々もまた存在しなかったのである。その上で、我々は何を生み出しているのか。一見西洋の抑圧から解放されたかのような無邪気な制作物が氾濫しているが、これでいいのだろうか。難しいところだ。