なつかしいアシモフのSF

アイ・ロボット (角川文庫)

アイ・ロボット (角川文庫)

「ロボット工学の三原則」で有名なSF本である。一応、その三原則を記しておこう。

  • 第一原則 ロボットは人間に危害を加えてはならない。あるいは、なにも行動を起こさずに、人間に危害がおよぶのを見過ごしてはならない。
  • 第二原則 ロボットは人間の命令に従わなければならない。ただし、その命令が第一原則に違反する場合は例外とする。
  • 第三原則 ロボットはみずからの存在を守らなければならない。ただし、それは第一原則および第二原則に違反しない場合にかぎる。

というものである。実は、この三原則を考え出したのはアシモフ本人ではないらしいが、これを用いて創作をおこなったのは彼に間違いない。
 SF初期の作品であるので、細部のSF的意匠は、なんとも古めかしくなっているのは已むを得ない。本書のロボットは最初から感情を持っているし、超越的な存在を直覚し、無意識すらあるようだから、SFとはいえ、無理の多い設定ではないか。(実際、人間以上の存在と見做されているところもある。)また、話の骨格も、基本的にロボットにおける三原則の間の葛藤や、最高の命令になっている、第一原則を守る上での葛藤を利用したもので、パターン化していると云えばそうだ。それでも今でも読ませるのは、ミステリーっぽい手法を使い、ストーリーテリングの上手さが光っているからだと思う。しかし、とりわけ最後の二篇などは、文明批判的な読みも可能で、ここらあたりはかなり面白かった。SFを読んだのは久しぶりだけれども、アシモフには文学的な高度さというものは乏しいし、今の日本のSFアニメなどの精緻さには遠いだろうが、これはこれで悪くない。思えば、中高生の頃はよくSFを読んでいたのであって、それを思い出すようなノスタルジックな感じもした。