パヴェーゼの青春小説

美しい夏 (岩波文庫)

美しい夏 (岩波文庫)

本書を簡単に言ってしまうと、十七歳の少女が女になる物語ということで、まあ今まで、如何ほど書かれてきたかわからないような主題ではある。が、それを、とてもシンプルかつ繊細な手付きでやってあるところが、読ませる所以だ。訳文の繊細さも、それに与って力があるだろう。本書は全篇が女言葉で書かれているが、自然で落ち着いた、少女の言葉遣いになっている。また、何となく全体が打ち沈んだようなトーンで統一されており、女になるというのが、喜びばかりでなく、文字通り何かの喪失であることを、何かの面倒事の始まりであることを、それ自体が物語っているかのようである。