明治天皇のヴィジュアル・イメージ

天皇の肖像 (岩波現代文庫)

天皇の肖像 (岩波現代文庫)

明治天皇のヴィジュアル・イメージが、どのような政治的効果を担ったものかを解明した、刺激的な本である。明治初期、天皇というのは、最初は民衆にほとんど意識されていなかった。それが、様々な「視線の政治学」によって、権力化されていく。その帰結が、有名な天皇の「御真影」なのである。面白いのは、この「御真影」が、肖像画を写真撮影したものだということだ。一種の「理想化」が、ここでなされているわけである。実際、若い頃の写真ではどこか神経質そうなところの見られる若い明治天皇が、「御真影」では、堂々とした威厳のある大人であるように見える。ここで天皇は、「家父長」的なイメージを持たされるようになっているのである。