最新宇宙論を含む、物理の面白さが堪能できる科学本

宇宙を織りなすもの――時間と空間の正体 上

宇宙を織りなすもの――時間と空間の正体 上

宇宙を織りなすもの――時間と空間の正体 下

宇宙を織りなすもの――時間と空間の正体 下

前著『エレガントな宇宙』では超ひも理論をわかりやすく解説してみせた著者だが、本書では、その超ひも理論の発展などにはあまりページを割いていない。本書の特徴は、最新の宇宙論について詳しく述べてある点にあろう。何といっても物理学での最近の大きな発展は、まさしく宇宙論の分野にあるからだ。そのために、現時点における、時間と空間(さらにはまとめて「時空」)についての物理学の理解が平易に語られており、そうしたことを知りたい人には、いい本だと思う。しかし、「ホログラフィック原理」などというのが真面目に議論されているのが、現代物理学のおもしろいところだ。
 本筋にはあまり関係がないのだが、個人的に驚嘆したのが、上巻の第七章にある、「遅延選択量子消去実験」というものである。量子力学において、(例えば)光子を二重のスリットに通すことにより干渉パターンを作ったり、途中に観測機器を入れて干渉パターンを消したりする実験はよく知られているが、その両方を「同時に」行う実験である。詳しくはここではとても書けないので、本書を参照(p.321-328あたり)されたいが、量子力学の奇妙さもここに極まったというような実験だ。この実験は、理系に強い人にもあまり知られてないと思うが、量子力学の原理の(なぜかはわからないほどの)強固さを示しているというほかない。
エレガントな宇宙―超ひも理論がすべてを解明する

エレガントな宇宙―超ひも理論がすべてを解明する