「幸福」を経済学で扱う

この本には啓蒙された。経済学というと、需要と供給とか、為替や利子、株価などというものを論ずる学問だと漠然と思っていたのだが、必ずしもそのようなものに限らないというのだ。本書に拠れば、「幸福」や「公平」、「自由」といったものまで、数理化することができるのである。「幸福」を数値化するなんて、という人も当然いるだろうが、曖昧な言葉で水掛け論をやっているより、きちんと数理モデル化した方が、問題を明確化できるということもあるのだ。経済学がこのようなものであるなら、個人的には、この学問もとても面白そうに見える。実際、経済学の主流はこうしたものらしいが、自分には意外だった。
 本書で使われている数学は、自分には完全には理解できなかったが、「加法性を要請しない確率」という発想は、興味深い。これは、個々の確率の総和が1にならないような確率理論である。人々の感ずる不確実さというのは、このような確率の方が、むしろピッタリくるらしい。