- 作者: 加藤文元
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2009/06/01
- メディア: 新書
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記述の時代が進んでいくにつれ、本書のライトモチーフとして、「計算する」数学と「見る」数学の対比、ということが出てくる。これもまた著者の独創だと思われるのだが、古代からの幾何学が「見る」数学だとすれば、デカルトが座標を導入し、幾何学を代数化したのは「計算する」数学だ、というわけである。この弁証法はその後も登場し、射影幾何学の形式論理化がまさしくそうだし、そのような流れが行き過ぎたところにあらわれたのが、「見る」数学である、リーマンの「面」の概念であり、リーマンの後世への決定的な影響も、そこにあった、というのだ。そして、グロタンディークのスキーム理論は、その異質な二つの数学を一挙に統合してしまう。
本書が万人におもしろいかはちょっと自信がないのだが(新書にしては難解かも知れない)、自分にはとても刺激的だった。数学史というのも既にたくさん書かれているから、こうして新鮮な切り口を見せてくれるためには、かなりの努力が必要だったのではなかろうか。数学本を読むといつも思うのは、数学は無限に豊かであり、尽きることがない、ということである。まさしく学問の女王であり、楽しみもまた尽きることがない。