スーザン・ソンタグ
- 作者: スーザンソンタグ,富山太佳夫
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2007/08/24
- メディア: 単行本
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けれども、ソンタグの散文は、決して堅苦しいようなものではない。本書には、文章家の「声」の魅力を語った文がいくつかあるが、これは恐らく実際に発声されるものというよりは、文章の「声」なのだと思う。そして、静かで淡々とした彼女の文体の「声」が、これまた魅力的なのだ。自然に染み入ってくるような感じというか、決して高く大きな声ではない。ちょっと真似がしてみたくなるような文体である。
ソンタグが本書で扱っているのは、ポール・グッドマン、アルトー、レニ・リーフェンシュタール、ベンヤミン、ジーバーベルク、ロラン・バルト、カネッティなど、主に西欧の文学者、芸術家、思想家であるが、関連領域を読み込んでおり、正直言って、自分の教養は彼女を読むために充分ではない。まあベンヤミン、バルトくらいのものだが、別に知識がなくとも、彼女の口上を追うのは楽しい体験でありうるというのは、自己弁護ながら言っておこう。
それから、蛇足ではあるが、読んでいて浅田彰のことが頭を離れなかった。ソンタグの遺著の翻訳の書評を最近新聞に書いていたように、浅田はこのソンタグや、エドワード・サイードなどの、アメリカの偉大な知識人をリスペクトしているが、それは、これまた「悪い場所」である日本で「知識人」として生きるという境涯が、そうさせるのであろうか。それにしても、浅田がソンタグくらいに「文学的に」書ければ、(余計なお世話であろうが)もっと多産で、我々を裨益する仕事ができたろうにと思わずにはいられない。