興味深い日露戦争史
- 作者: 横手慎二
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2005/04/25
- メディア: 新書
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さて、当時の国力は、総体的に考えてロシアが日本を上まわっていたわけだが、どうして戦争は日本が勝ったのか。本書全体の印象では、その原因は、ロシアが抱いた日本のイメージが、はっきりしていなかったことにあったように思える。つまりロシアは、開戦の前は日本を過小評価し、開戦後は概ね過大評価した。そのため、ロシア側が軍事的好機を逸したことが、頻繁にあった。また、軍事面・外交面で、日本は概ね妥当な手を打っているが*1、ロシアの方はミスが多く、国内対策も失敗している*2。そのあたりが積み重なり、最終的に日本が勝利したようである。
本書に拠れば、日露戦争は、従来の「植民地戦争」の延長線上で考えるべきではなく、はっきりとした「大国と大国の」戦争であった。また、機関銃の大量使用や塹壕戦、さらには事実上の「総力戦」であったことも考えると、第一次世界大戦の先触れであったともいえるだろう。よくいわれることだが、非西洋の国家が西洋の(進んだ)国家と対等に戦いうることを示した点でも、もちろん重要である。日本にとっても世界史にとっても、意義の大きな戦争だった。ここから日本は、第二次世界大戦での敗北に、一気に突き進んでいくわけだが。